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財産分与義務の相続-相続の対象となるとした事例-

★事案
昭和62年 大分地裁

花子と太郎は昭和32年11月婚姻し、昭和34年5月に長女を、昭和383年3月に次女をもうけた。
花子は昭和50年ころから正夫と不倫関係を結ぶようになった。花子は、昭和53年4月に家出して、そのまま正夫のもとへ行き、昭和53年5月に、花子と太郎は協議離婚した。正夫は、昭和53年1月に妻と協議離婚し、同年11月に花子と再婚した。
太郎は昭和55年1月に死亡。花子は、昭和55年5月に長女、次女が花子の財産分与義務を相続したとして、財産分与の審判申し立てをした。
長女と次女は、花子に対して、財産分与請求権が存在しないことの確認を求める本件訴訟を提起した。

★判決
裁判所は、次のように述べ、花子に太郎との離婚に基づく清算的・扶養的財産分与請求権が全く存在しないということはできないとし、長女と次女の請求を棄却した。
「いわゆる清算的財産分与義務に関しては、それが財産請求権であることを鑑みると、その相続を否定する理由はない(民法896条参照)。
一方、扶養的財産分与義務については、長女らの主張のように、義務の一身専属性を肯定しつつ、被相続人の生前に財産分与請求の意思表示がなされたか否かで決する考えもあるが、にわかに採用しがたいといわなければならない。
 むしろ、
① 民法上の相続制度の趣旨は、民法887条以下所定の相続人に対し、相続財産中に存在するその潜在的持分の取り戻しを認めるとともに、配偶者の場合、このような要請は離婚の場合にも存在し、これを規定しているのが民法768条であると解釈されること
② 相続人が、その承継した被相続人の立場に立って、財産分与に関する協議をすることも実際には可能であること
③ 義務の相続を肯定したとしても、相続放棄・限定承認など民法上の他の制度によりその責任を相続財産の程度にとどめることが可能であること
④ 扶養に関する一般規定である民法881条は「扶養を受ける権利はこれを処分することができない」と規定するだけであって、同条も明文上は扶養「義務」の「相続」を否定していないこと などを鑑みると、扶養的財産分与義務についても、その相続を肯定するのが相当であるといわなければならないとした


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