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難病を原因とした離婚請求:離婚請求を認めなかった事例

★事案
平成3年・名古屋高裁

太郎と花子は昭和47年に婚姻し、昭和50年に長男、昭和53年に長女が生まれた。
花子は昭和62年ころ、国が指定する難病、脊髄小脳変性症と診断され入院した。
脊髄小脳変性症は脊髄と小脳が変性するので、平衡感覚に失調をきたすが、知能障害はみられない。
花子は入院後も真っ直ぐ歩けず、階段も手すりにつかまらなければ昇り降りできないなどの平行感覚の障害が顕著で、言語障害もあり、家事労働を行うことは困難である。
太郎は花子の入院後、1回面接に来ただけで、子供達に対して花子との面会を禁止している。
なお、脊髄小脳変性症は国の特定疾患に指定されているため、治療費の個人負担はない。
太郎は花子に対し、民法770条1項5号(その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき)に基づいて、離婚を請求した。

★判決
花子は家事をこなす能力に欠けており、周囲の援助がなければ、日常生活さえ支障をきたす状態にあるが、一方、知能障害は認められず、家族間における精神的交流は可能であり、子供達との同居と婚姻生活の継続を希望する花子の意思を考慮すると、日常生活の役に立たなくなったからという理由だけで、花子を妻の座から去らせようとし、しかも入院させたものの、国の援助に頼るのみで、看病はおろか、入院生活の援助もせず放置し、将来にわたる誠意ある支援態勢を示そうとはせず、さらには花子の希望する子供達との交流さえ拒む、太郎の態度のみによって、婚姻関係が回復しがたいほど破綻しているとはいえないので、離婚請求は認めない。

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